小屋番の詩

雨にも負けず

風にも負けず

雪にも夏の暑さにも負けぬ

丈夫な山小屋をもち

欲はあり

時々怒鳴ったりするが

いつも高らかに笑っている

1日に六本の缶ビールと

日本酒を三合飲んで

それでも足りない時はウィスキーを舐めて

あらゆることに自分だけの計算をして

よく見聞きし分かり

けれどすぐに忘れて

仙人谷の小さなトタン屋根の小屋にいて

東に病気の登山者がいれば

行って看病してやり

西に疲れた登山者がいれば

行ってそのザックを背負い

南に死にそうな遭難者があれば

行ってこわがらなくてもいいと言い

北にテン場の喧嘩や争いがあれば

つまらないからやめろと言い

日照りの時はヨタヨタ歩き

寒さの夏は売上に絶望し

女房に役立たたずと言われ

褒められもせず

苦にもされず

そう云う小屋番に

わたしはなりたい

黒部の仙人 高橋重夫 2014年9月9日掲載 T-125

雑念多し仙人、瞑想で邪念を振り払う

仙人温泉小屋

北アルプスの山小屋【休業中】です。 上は剱岳、下は黒部川、その中腹にあります。 仙人谷の噴気孔から温泉を引きます。 雪深いため夏期のみの運営になります。