呑んべえじいさんの小屋閉め日誌

村上さん報告 2025年9月2日掲載 T-266

8月12日

ようやく明日から、天気が、よくなりそうだ。さあ、小屋閉めに、出発だ。ザックに、テント道具一式詰め込む。食料、ガス、アイゼンにピッケル、寒いかもしれないので、着るものをもう一着入れて背負ってみる。

 ウ~ン

テント背負うのは、10年ぶりだ。重い、これは、無理でしょ。

真砂沢ロッヂのホームページをみたら、空きが、有りそうなので、早速TEL、1人分の空きがありました。

 ラッキー

8月13日

5時頃立山駅に着く。早速準備して、チケット売場へ行くと、まだ、5時半前なのにすでに、100人近い列。チケット販売が、6時20分とのこと。おいおい、もう少し早くならんのかよ、と思うも、どうにもならない。後ろには、どんどん列が、長くなる。待つこと1時間半、ようやくチケットゲットだ。乗車は、7時50分。まだ、50分も待つのか

 ア~ア

9時頃やっと室堂到着。天候は、思っていたほど良くない。

15年位前は、テント背負って1日で、仙人小屋まで行けたのに、ザックを軽くしても、雷鳥沢のぼるのが、やっとこらしょ。休んで、歩いて、休んで休んで、御前小屋に着いたら、ヘロヘロ、バテバテ。やっと、ひと息つける。

あとは、下りだが、剣沢の雪渓が気になる。20年位前から、歩いているが、毎年様子が違うので、注意しなければならない。今年は、雪が多かったのに、高温と、昨日までの大雨で、雪渓が、少なくなっている。

夏道が長い。順調に歩いていたが、なんと、最近山登りしていないツケが回ってきた。

8月14日

左足の膝に痛みを感じる。

 ままよ

小屋を6時に出る。ウ~ン何とか行けそうだ。二俣吊り橋まで、1時間10分。足が痛いわりに、まあまあのペースだ。

この後、仙人新道の登りでだんだん痛くなってきた。登りは、右足から、下りは左足からとにかく、半歩ずつしか進まなくなる。ちょっと弱気になって、助けを呼ぶかと思うものの、いや、まだ俺は大丈夫なんて、変な自分が顔を出してくる。

高い山も、一歩ずつ進めば届くと言うけれど、半歩ずつでは、歯がゆい。

それでも、何とか登り切ったよ。仙人峠で、ゆっくり弁当食べました。ガスで、チンネが見えなかったのは、残念だったけどネ。

 これが最後かもしれない •••

と言うのも、年が年だから、二度と来れないかも   •••

でも、これからが、楽しみのひとつ。去年開拓されたばかりの新道、(雲切り新道ピークから仙人池ヒュッテまで)の道を、歩きたかったのだ。ここまで来たら、左足は、もう引きずっている状態。登りより、下りのほうが大変だった。半身になって、左足から下る状態。新道を、楽しむ余裕なんて有りません。新道は、これでもか、これでもかと、じいさんを、いじめてくれました。

ここまで来たら、もう誰も来ない。助けを求めることは出来ない。慎重に、ゆっくり、ゆっくり、なんとか雲切り新道までたどり着いて、やっと仙人温泉小屋まで行けると確信したよ。小屋まで30分の所、1時間かかりました。

途中源泉の下で、仙人と12日ぶりの松尾和子だったね•••••••

 再会だよ

小屋に着いて、さっそく温泉♨️に入り今日の疲れを癒す。片足悪いながら、8時間歩いた。

 疲れた😣💦⤵️

 ♨️ばんざーい

8月15日

 アレ ~

朝、水も温泉も、出ていない。5時から仙人は温泉、じいさんは、水直しに出かける。2時間程で何とか、直った。さあ、これでやっとビールだ、ビールだ。飲んで、飲んで、飲んで、アレ? 

水が止まってら。又かよ、今日2回目の修理に向かう。何やかやいい運動になる。一汗かいて、♨️に入れば、又、うまい酒が飲める。

夕方から、雨が降ってきた。簡易テントだから、寝る所が心配だ。先週の大雨で、テントの骨が、雨水に耐えきれず、折れたそうだ。水も温泉もストップし、仙人は、1人用の小屋で、外へも出れず、雨水で、生活していたそうだ。3日間さぞ辛かったと思う。が、そこが仙人たる由縁だ。

疲れているのか、5時半に、寝所へ行った。雨は、やむ気配がない。このまま寝ても良いのか?雨で、テントが潰れれば寝ているどころではない。さあ、どうする、考えるだけむだだ。無駄な抵抗せず、この大自然を楽しむのみ。ただ、ただ、飲み続けるじいさんでした。

最後のプロパンガスがなくなった。後は、カセットコンロでつなぐようだ。

8月16日

朝5時起床、水も温泉も、勢いよく出ている。雨は、降っていないが、どんより雲っている。寒い。例によって朝ビールを飲む。1本、2本、つぎは、焼酎だ。

6時、日が射してきた。有難い。テントの屋根は、雨粒が、ビッシリ付いている。壊れている所は、水がたまっている。 何とか一晩持ってくれた。今日中に、何とかしないと。

6時半、仙人が起きてきた。ビール飲みながら、さっそく料理を、始める。有難いねエ。麻婆豆腐、とろろ芋、白菜の漬け物も作ってくれている。

富山では、時間や、規則に縛られず、他人に迷惑をかけず、自由気ままに人生を楽しむ人を、みやあらくもんと言います。高橋仙人は、まさに、みやあらくもんなのです。

酒を飲みながら、囲碁、2連敗。調子が悪い。テントの屋根を修理し、11時半頃温泉に入っていたら、

 アレー

又々、マタマタ水がストップ。さっそく直しに出かける。仙人はまた寝ている。水を直して帰ってくれば、1時間近くかかってしまう。こんなにしょっちゅう水がストップするのは、珍しい。小屋へ来てもう3回目だ。

昼ビール&焼酎のあと、ゆっくり♨️に浸かり、横の石の上に寝そべる。至福の時だ。吹き上げてくる風が、気持ち良い。今日は、このまま温泉が止まらないことを祈る🛐。

8月17日

4時半に♨️に入る。 寒い🥶

水も温泉も出ているので、一安心。5分も湯船に浸かっていれば汗がにじんでくる。寒い風も心地よい風に変わる。人間って勝手な動物なのだ。

5時、「プシュー」とビールの缶を開ける音が聞こえて、3時から飲み始めるみやあらくもんがいたが、今年は、来ることが出来なかった。じいさんは、4時から付き合ったが、今年は、5時から始めている。

7時、又々、又々、又水がストップア~ア。もう山口百恵にしてくれよ。これっきり、これっきり、もう🎵ホントこれっきりにしてほしいヨ。もう少し飲んでから行くか。

そのうち、仙人と囲碁が始まる。勝てない。やっても、やっても負ける。あ~もう、水直しに行こっと。少し歩き始めて、水のホースが見える所で確認。水は、通っている。下りながらジョイントをチェックしてくると、なんと、食堂のすぐ横で、ハズれていた。徒歩10歩なのに、石垣で見えないのだ。まあ、近くなので、良としましょう。

この後また、囲碁が始まる。来た時は、黒先だったが、2子から、3子、4子置まで行ってしまった。 何て日だ!!

少し動いては、♨️に入ってビールの繰り返し。

昼、一昨日炊いた2合の米を、二人でやっと食べ終えた。2人は、酒のつまみが主食なので、米は、殆ど食わないのです。

午後から、仙人は食料等、保管する、越冬用の小屋作り。あと、少しで完成しそうだ。小屋閉めまで後1週間。いよいよエンジンがかかってきたかな?じいさんは、ゆっくり飲ませてもらう。飲んで~🎵のんで~飲まれて~のんで🎵なんて歌があったけど、飲みつぶれる訳には、行かない。水や温泉がストップしたら、すぐ直しに出かけるのだ。

料理が出来ないので、じいさんの仕事は、水回りなのです。ただ、後何年できるかなぁ。ふと、足下を見ると、ビールの空きカンだらけ。少しずつ片付け始めた。

2時半、一仕事終え、仙人が来ました。飲みながら、昨日と同じくポテト🍟フライを作ってくれました。有り難うございます。これで、米は炊かなくても良い。

飲みながら囲碁。仙人は5時に床へ。

♨️に入って、石の上に座り、自分の体を見たら、昔、銭湯で見た. おじいちゃんの身体になっている。

 うーん

気を取り直して、これから晩酌だ~。今日1日何回♨️に入ったのか。ビール何本飲んだのか。分からなくなっている。いいじゃア🎵ないの~🎵しあわせ~ならば~

飲んべえじいさんの夜は、ふけて行くのであった。明日につづく

8月18日

今日も4時半から朝風呂♨️だ。

唐松岳と白馬の山小屋の明かりが良く見える。客で、賑わっているんだろうなぁ。

仙人谷の対岸に目を向けると、先日下って来た新道の尾根が、シルエットになっている。風呂から眺めると、なだらかな尾根にみえるが、実際は、アップダウンも多く、きつい道だ。仙人ダム約860メートルから南仙人山約2170メートルまで、1300メートルの高低差がある。水場も無く過酷な登山道だ。よほど健脚いや、それ以上じゃないと、とても無理だと思います。旧道のほうが、水場もあり、歩きやすかったよ。

おっと5時だ。

♨️から上がってさっそくビール。オハラショウスケさんだネ。

仙人6時起床。

さっそくポテトフライ作ってくれる。揚げてから塩をふるのではなく、油に塩を溶かしてあるそうだ。いや、うまい。益々ビールがすすむ君だ。玉ねぎもいける。

例によって囲碁が始まる。気がついたら、12時になっていた。5時から座りっぱなし。朝炊いたご飯、少したべる。仙人は昼寝、しかし良く寝るね。じいさんは、♨️に入る。日射しが強いので、岩陰の方で楽しむ。来た時には、まだ赤トンボが飛んでいたが、今日は、見えない。街では、35℃以上の日がつづいている。ようだが、山は、確実に秋の気配が、近づいている。

オッともう2時だ。

飲んべえじいさん第2ラウンド開始。3時40分。太陽は、山陰に隠れ、あたりは、陰ってきた。これから、急激に冷え込んでくるのだ。さて、♨️でも入るか。

8月19日

今日、助っ人が2人来る予定だ。

じいさんは、テントを明け渡し、隠居部屋に引っ越しだ。

仙人は、越冬物質を入れる小さな小屋を、あちこち作っている。物を入れなければ、人が横になるスペースは十分にある。しかし寒い。朝風呂に入らなかったので、震えながらビールを飲んでいる。6時過ぎ太陽☀️が昇って来るまで我慢だ。

仙人定刻に起きてくる。

今日もポテトフライ食べながら囲碁、やはり12時になってしまう。仙人は昼食も食べず昼寝。じいさんは、♨️だ••••と思ったとたん、お湯が止まった。12時半直しに出かける。源泉の下だが、なかなか上手く出来ない。1時間近くかかった。

そろそろ彼らが来る頃なので、しばらく待つと。やって来ました二人連れ。

 オ~イ。オ~イ。ヤアヤア。

田中、原田氏到着。3人で小屋へ。仙人はまだ、寝ている。2人に♨️に入ってもらい4時過ぎ、4人で乾杯🍻だ。

 アレー

今日はまだ♨️に入ってないぞ。今日の湯は、ホースの水を噴気口の一番熱そうな所に突っ込んだので、郷ひろみの湯になっている。

  🎵 アチチ  アチ

風呂から上がれば晩酌だ、皆さん時間がくれば、お休みだ。あれ❗もう星が出ている。じいさんも寝ます。

8月20日

やはり♨️に入り、5時から1人カンパイ、優雅な生活だよ。

5時半、二人が起きてきた。田中さんは、台所でチョコチョコ料理を作ってくれるので有難い。仙人は、相変わらず6時起床。

朝食後、2人は、池の平小屋まで出かけて行った。元気あるなぁ。

囲碁2局打って、仙人は、残りの仕事。じいさんはチビチビ飲みながらゆっくりさせてもらう。さすがに11時頃眠くなってきた。イスに座わりながらコックリ、コックリ、じいさん病だ。

気がつくと、作業の音がしない。仙人も昼寝かな。久々に腹が減ってきた。じいさんの出来ることは、お湯を沸かして、インスタントラーメン作るくらいだ。おっと餅も焼いて餅入りラーメンにしよう。

その後♨️に入り、石の上で寝転ぶ。ゆっくりしていたら2時間も入っていた。陽に焼けたよ。囲碁を2局打ったら4時半、2人はまだ帰って来ない。ちょっと心配になる。が、5時過ぎに帰って来た。一安心。

6時頃からポツリポツリ降りだした雨が、7時頃一時どしゃ降りになる。ブルーシ--トの屋根なので、雨が入り込むし、雨漏りするし、てんてこ舞い。30分程で収まったので、ほっとした。今日は、早めに寝よう。

8月21日

どんより雲っている。小さな雨粒が、時々落ちてくる。相変わらず、5時からプシュ。まずい、雨足が強くなってきた。

6時頃全員集合。

雨もようやくやんだようだ。田中シェフは、昨日の残りの米で、チャーハン作り。仙人は、大人気のボテトフライ作り、有難いねェ。

昨日ふたりが、池の平小屋まで、行ってくれたおかげで、いろいろな情報が、入りました。とにかく、仙人小屋には、今年電話が無いのです。小屋のヘリポートは、草が伸びすぎているので、草刈りお願いしますとのこと。そりゃ大変だ。荷下げが出来ない。早速3人で草刈りに行ってきた。1時間ほどで終了。1人なら大変だ。

陽も射してきたさてもう一杯のむか。

昼近くになると、田中シェフが天ぷらを揚げてくれる。なす、玉ねぎ、など、そうめんと天ぷらで昼食だ。食べて、飲んで、♨️に入る。湯と水は、パイプから勢いよく出て、浴槽からあふれ出ている。まさに源泉掛け流し。丁度良い湯加減だ。42℃くらいか、単純に計算すると、水の温度が12℃とすると、湯の温度は、72℃になる。70℃以上の湯が、溢れんばかりに出ているのです。明日は温泉撤去なので、ゆっくり露天に入るのは、これで最後か。

こんな奥山にいる限り時間に束縛されたくない。明るくなれば起きる、暗くなればねる。まだ明るいので、飲む。

8月22日

5時

爽やかな秋空がひろがる。そよ風が寒い。ビールを1本2本。

6時前皆揃う。とろろ芋とポテトフライで酒がすすむ。

今日は小屋締めの一大イベント 温泉撤去の日だ。

仙人温泉の湯は、右岸側から有に100メートルはあろうかという谷を、空中から通ってくるのだ。源泉は、湯が涌き出ている訳ではなく、水を引いてきて噴気口に突っ込んでいる。

8時前じいさんは、少し先に出て源泉まで行き、湯を止める。

3人は、ワイヤーとパイプを降ろしその後4人で、結んである針金を外す。半分は、右岸側の平らな所まで引っ張り上げて束ねる。3人は、それから左岸側に移動し、のこりのワイヤー、パイプを引き上げる。じいさんは、源泉まで引き込んでいる水のパイプを、雪崩の来ない所に保管して、一通り作業は、完了です。3時間位で終わった。

小屋に戻って飲んでいたら、始まったよ。  待ってました。仙人の桶屋の桶次郎開演。

 皆大爆笑

昼食前に皆で、残り湯♨️に入って記念撮影。そのうちまた、桶次郎と囲碁が始まる。昼食どころではない。チビチビ飲みながら2連敗、せっかく3子まで戻したのにまた4子に逆戻り。

ポットのお湯がなくなった。じいさんは、ビール6本位と焼酎を、お湯わりにして、2.2㍑のお湯を1日で、飲んでしまうのだ。すぐお湯を沸かしてポット一杯にしておく。

今日少し歩いた時、ようやく左膝も回復したようだ。足を気にせず歩けると言う事が、こんなにうれしいんだね。これは、辺見マリしないとわからないネ。

 経験だよ

8月23日

仙人温泉小屋最後の1日、相変わらず5時からプシュ

今日は、テント、台所、食堂?など、解体出来る所は、なるべく片付けたい。食料も片付けないと、テントが片付かない。

8時から作業開始。

あるわ、あるわ、去年からの残りと、今年荷揚げした分を仕分けして、収納。あちこち散らばっている要らない物も集めて整理する。      と、突然猿が現れた。10メートル程の距離だが、逃げる様子も無い。小猿がかわいい。明日、我々が下山するのがわかっていて、あいさつに来てくれたのだろう。もうすぐ、ここも猿の天下になるのだ。

雨が降らないので、屋根のブルーシ--トも片付けた。台所と屋根の無いテーブルで今日は、しのぐ。晩酌を早めに済ませ、6時だけどもう寝よう。

8月24日

3時起床

暗いうちに今まで使っていた毛布や枕、シュラフなど、収納部屋に詰込み、フタをする。食器や調理器具など片付け始めると、まだまだやることが、残っていたが、何とか時間通り片付いた。

7時20分頃ヘリがきた。下げ荷を運んでもらうためだ。

その後下山。扇沢で、3人と来年の再会を約す。

アルペンルートで立山駅まて戻るため、1人雑踏のなかに紛れ込んで行った。

おわり

仙人温泉小屋

北アルプスの山小屋【休業中】です。 上は剱岳、下は黒部川、その中腹にあります。 仙人谷の噴気孔から温泉を引きます。 雪深いため夏期のみの運営になります。